焼き肉の相性は性格の相性だと思う

七夕の日、恋人と焼き肉を食べに行った。恋人が仕事から帰ってくる前に、わたしはシャワーを浴びてメイクと髪のセットをした。紺色の麻のロングスカートに、ミントグリーンのノースリーブニット。我ながら「これはイイぞ」と思った。夜のデートはそれに合ったお洒落をするのが楽しい。

ぜったい二人でお酒呑みたいね、ということで歩いて焼き肉屋まで行き、わたしは生中、恋人はウーロンハイを頼んだ。なんの記念日でもない、だから乾杯の言葉は「仕事おつかれー!」。店のビールが美味しく感じるのは、ジョッキの重みが理由のひとつにあると思う。少し腕に力を入れてジョッキを持ち上げて、泡に口をつける。あとは勢い。幸せのとき。隣には恋人もいるし。カウンター席みたいなところにふたり並んで座ったから。

焼き肉を食べに行くとき、わたしはほぼ全部を恋人に任せている。肉の注文(食べたい肉やタレか塩か等は一緒に決める)、焼き方、焼くペースなどなど。恋人は学生時代に焼肉店でアルバイトをしていたから焼き肉に詳しい。自分で焼くより恋人が焼いたほうが遥かに美味しい。肉をひっくり返すタイミングが絶妙なのだ。焼肉奉行。

わたしは「はいどうぞ」と言われた肉を食べるだけ。たまに顔を見合わせて笑うだけ。幸せだなあと呟くだけ。何もしなくていいのかなあと一瞬思ったけれど、恋人が「藤さんは最高、本当に分かってる」と嬉しそうだったからこれでいいらしい。

焼き肉は、性格が表れる気がする。一度にたくさんの肉を焼く人もいるし、ゆっくりと少しずつ焼く人もいる。タンを初めに頼む人もいればカルビを頼む人もいるし、高級な肉をいくつか入れたり。サラダを頼むかサンチュにするか。タレにするか塩にするか。それぞれが楽しければ良いんだけど、肉を焼く七輪はひとつ。余り好みや焼き方に差があっては、どちらかが我慢しないといけない。合わせられるなら全然いいのだけど。恋人とはその辺がピタリと合うから、ノーストレスで焼き肉を楽しめる。ノーストレスで焼き肉って、最高じゃないですか。最初の一口から最後の〆まで、恋人とわたしはずっと「しあわせ」「しあわせだ」と言い合って笑っていた。たまに「本当にありがとう」と握手し合ったりもした。これ以上求めるものは何もない。

手を繋いだり腕を組んだり、途中のベンチで休憩したり、他愛もない話で笑いが止まらなくなったりしながらゆっくりと温い夜の中を帰った。

好きな人と焼き肉に行くの、本当にお薦めです。焼き方も食べ方も全然合わなかったら、それはそれで。

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